「お金がもっとあれば幸せになれるのに……」

こんなふうに考えたことがある方も多いのではないでしょうか。 生活していく上でお金は必要不可欠な存在ですが、果たして年収と幸福度は本当に比例するのでしょうか。

この記事では、お金と幸せの関係について最新の研究結果をもとに詳しくお伝えしていきます。 年収の飽和点や、お金以外で幸福度を高める方法についても取り上げていくので、より豊かな人生を送るためのヒントを見つけていきましょう!

お金と幸せの関係は本当にあるのか?最新の研究結果から考察

お金と幸福度の相関関係については、これまで多くの研究者が調査を重ねてきました。 その結果、興味深い事実が明らかになっています。

お金と幸福度の相関関係を示す科学的なデータ

アメリカの研究では、年収が7.5万ドル(約800万円)を超えるとそれ以降は、年収と幸福度の相関があまり見られないとのデータが発表されています。

日本でも内閣府が興味深い調査結果を発表しています。 年収100万円未満の人の幸福度は平均5.01、年収700万円以上1,000万円未満の幸福度は6.24で、1.23の差が開いているものの、年収1,000万円以上2,000万円未満の幸福度は6.52で、年収700万円以上1,000万円未満と比べて0.28しか差がないことが判明しました。

この結果は、年収がある程度の水準に達すると、それ以上の収入増加が幸福度に与える影響が小さくなることを示しています。

年収が増えた場合の幸せの変化とは?

最新の研究では、従来の定説が覆される結果も発表されています。

アメリカでは年収と共に幸福度が増す傾向は、年収50万ドルまで着実に高まっているという調査結果もあり、特に幸福度が高いグループの人々では、年収の増加とともに幸福度の上昇傾向がさらに強まることが分かっています。

一方、日本でも神戸大学が国内2万人を対象とした大規模調査を実施しており、興味深い結果が明らかになっています。 この調査では、所得が増加するにつれて主観的幸福度が増加しますが、変化率の比(弾力性)は1,100万円で最大となることが判明しました。

また、年齢との関係では、幸福感は若い時期と老年期に高く、35~49歳で落ち込む「U字型曲線」を描くことも分かっています。

重要なポイントは個人の幸福度のベースレベルによって結果が異なることです。 幸福度が元々低いグループでは収入の増加による幸福度の向上は限定的ですが、幸福度が高いグループでは収入増加の効果がより顕著に現れるのです。

年収と幸せの「飽和点」:どこまでお金が必要か?

お金による幸福度の向上には、やはり限界があるようです。 この限界点について詳しく見ていきましょう。

年収が一定額を超えると幸福度は増えない?

内閣府が2019年に実施した調査でも、年収と幸福度の興味深い関係が示唆されています。

日本における調査では、年収800万円程度が一つの目安とされています。 年収420万円以下の人は年収が増えていくと「幸福感」が増え、感じる「ストレス」も減少していきますが、年収が800万円を超えてくると、収入が増えても「幸福感」はほとんど変化しなくなります。

興味深いことに、年収3,000万円以上になると、逆に幸福度が下降するという衝撃的な結果も報告されています。

幸せを感じるための金額とその限界について

日本では年収2,000万円~3,000万円が幸福度のピークとされており、これは日本の世帯年収の中央値である437万円の約5~7倍に匹敵します。

しかし、年収が2倍になっても幸福度が2倍になるわけではないという事実も重要です。 実際に、年収500万円~700万円の世帯とその2倍である1,000万円~2,000万円の世帯を比較すると、幸福度は0.59ポイントしか変わらないのです。

この結果から、年収の絶対的な金額よりも、基本的な生活水準を満たすことの方が幸福度に大きく影響することが分かります。

お金を使う方法が幸福度を変える!使い方の違いとは?

同じ金額でも、使い方によって得られる幸福度は大きく変わってきます。 ここでは効果的なお金の使い方について探っていきましょう。

貯金・投資と経験・消費、どちらが幸せをもたらすか?

1000人を超えるアメリカ人を対象に行ったある研究では、回答者の57%が車や電化製品など物質的な”モノ”よりも、旅行やコンサート、その他のライフイベントといった”体験”を買うことでより大きな幸せが得られたと答えています。

この傾向は日本でも確認されており、消費行動に関する調査では、近年「モノ消費」から「コト消費」への移行が顕著に現れています。

電通DDDが全国20~74歳の男女計3,000人を対象に実施した「心が動く消費調査」では、外食やレジャーといった「有料体験・サービス」、映画や動画配信といった「有料コンテンツ」に「心が動いた消費」があったと回答した人が、調査開始以来最高値をマークしました。

これらの調査結果は、物質的な「モノ」の所有よりも、旅行やコンサート、その他のライフイベントといった「体験」により多くの幸せを感じる人が世界的に増えていることを示しています。

体験にお金を使うことが効果的な理由はいくつかあります。

旅行やパーティーなどのイベントでは、計画段階から幸福度の上昇が始まり、当日または前日に幸福度はピークを迎えます。 さらに、旅行などの楽しい思い出は、いつまでも記憶に残り、幸福感が長続きします。

一方で、モノを買った場合、買った瞬間は幸福度が高くても、その後すぐに幸福感を感じなくなっていきます。 これは、持っていることが当たり前になる、人間の慣れが原因なのです。

他者のためにお金を使うことがもたらす幸福感

興味深いことに、自分のためだけではなく、他者のためにお金を使うことも幸福度を高める効果があります。

誰かのためにお金を使うことも、幸福度が高まることが研究で明らかになっています。 これは、人とのつながりや社会貢献を通じて得られる満足感が関係していると考えられます。

プレゼントを贈ったり、寄付をしたり、友人との食事代を負担したりすることで、お金以上の価値を感じられるのです。

幸せを決めるのはお金だけじゃない!他の重要な要素とは?

幸福度は年収だけで決まるものではありません。 むしろ、お金以外の要因の方が大きな影響を与えることが多いのです。

健康、人間関係、自己実現が幸せに与える影響

日本独自の大規模調査では、興味深い結果が明らかになっています。 神戸大学が国内2万人を対象に実施した調査で、幸福感に与える影響力を比較したところ、健康、人間関係に次ぐ要因として、所得、学歴よりも「自己決定」が強い影響を与えることが分かりました。

この「自己決定」とは、中学から高校への進学、高校から大学への進学、初めての就職について、自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたかどうかを指しています。 自己決定度の高い人ほど幸福度も高くなっており、所得と比較すると約1.4倍強い影響があることが判明しています。

世界的な研究でも同様の傾向が確認されています。 ハーバード大学の長期追跡研究では、人を健康で幸福にするものは、富でも名声でも、いい仕事を得て働くことでもなく……、”よい人間関係を築くこと”に尽きることが明らかになっています。

また、仲が良いパートナーとの結婚から得られる幸福の上昇率は、収入アップから得られる幸福より767%も大きいという驚きの結果も出ています。

健康面においても、健康レベルが「普通」から「ちょっと体調がいい」に改善したときの幸福度の上昇は、収入アップから得られる幸福より6531%も大きいことが分かっています。

お金がないと感じても幸福を感じる方法

お金が少なくても幸福を感じる方法はたくさんあります。

まず、定期的な運動などの健康行動がウェルビーイング(幸福度)を向上させることの利点は、広く知られていることから、運動習慣を身につけることが重要です。

また、人とのつながりを大切にすることも効果的です。 家族でも友達でもコミュニティでも、周りとつながりが上手な人は健康で長生きをするということが研究で確認されています。

自分の価値観に基づいた生活を送ることも大切です。 無理に他人と比較するのではなく、自分らしい幸せを見つけることが長期的な満足につながります。

お金の増加に伴う心の変化:過剰な追求が招く不安やストレス

お金への執着が強すぎると、かえって幸福度を下げてしまうことがあります。 この心理的な影響について詳しく見ていきましょう。

過剰な労働や収入追求が心の幸福感を損なう可能性

年収が高い人は、大きな責任を負いながら仕事をしていることも多く、そのぶん抱えているストレスも大きいことが予測されます。

また、責任だけでなく「家族と過ごす時間がとれない」「趣味の時間がない」という状況もストレスの原因となってしまいます。

お金への不安が過度になると、お金の不安にとりつかれたままになってしまうという「貧困妄想」という状態に陥ることもあります。 生活に困らないだけの貯金があるのに、「このお金はあっという間に底をつく」などと考えてため息をつき、「すぐに家を売った方いいのでは」「子どもの学校をやめさせなくては」などと極端な思考に走ってしまうのです。

心の平穏と生活の質を高めるためのお金の使い方

健全なお金との関係を築くためには、バランスの取れた考え方が重要です。

お金は、自分の人生を自分らしく生きるための道具であり、自分の人生の応援団ですという捉え方を持つことが大切になります。

また、”自分軸”に基づいてお金を使っていけば、自然と、衝動的でもなく、罪悪感もない、賢い使い方ができるようになるのです。

ストレス発散のためにお金を使うのではなく、お金をかけずに楽しめることを見つければ、浪費癖を克服するのも決して夢ではありません。

お金と幸せの相関に関するよくある誤解とその真実

お金と幸福度の関係について、一般的に信じられている誤解がいくつかあります。 ここでは、その真実について明らかにしていきましょう。

幸せはお金で買えない?お金の使い方の本当の価値

「幸せはお金で買えない」という言葉はよく聞きますが、これは完全に正しいとは言えません。

基本的なニーズを満たしてしまえば、お金で幸せを買えるかどうかは、何に使うかにかかっているのです。

重要なのは、自分の価値観に合った体験やアイテムにお金を使えば幸せが増すということです。 お金そのものが悪いのではなく、使い方次第で幸福度に大きな違いが生まれるのです。

また、お金は幸福になるもっとも確実な方法だという側面もあります。 これは、基本的な生活の安定がもたらす安心感や、選択肢の多様性が関係しています。

お金がないことが必ずしも不幸とは限らない理由

一方で、お金が少ないからといって必ずしも不幸になるとは限りません。

年収300万円台では、回答者のほぼ半分が幸福度70点以上と答えていますという調査結果があります。 年収と幸福度が正確に比例するのであれば、年収が3分の1になれば幸福度も3分の1に低下するはずです。しかし、幸福度は2割弱しか減少していません。

これは、満足度は部分的なもので、幸福度は満足の集合体だからです。 お金は幸福度を構成する要素の一つに過ぎず、人間関係や健康、生きがいなど他の要素も同じように重要なのです。

また、すべての年代において男性のほうが女性よりも平均年収が高いにも関わらず、男性より女性のほうが「幸せ」と回答する数が多いという興味深いデータもあります。

これらの事実から、幸福度は年収の絶対値よりも、総合的な生活の質や個人の価値観によって大きく左右されることが分かります。

まとめ

お金と幸せの関係について、様々な角度から詳しく見てきました。

研究結果から明らかになったのは、年収と幸福度には確かに相関関係があるものの、ある程度の水準(日本では800万円程度)を超えると、その効果は限定的になるということです。 むしろ、お金の「使い方」や「お金以外の要素」の方が、長期的な幸福には大きく影響することが分かりました。

真の幸せを得るためには、基本的な生活の安定を確保した上で、人間関係や健康、自己実現といった多面的な要素をバランス良く育てていくことが重要です。 お金は幸せの道具の一つとして上手に活用し、過度に執着することなく、自分らしい豊かな人生を築いていきましょう!