
「お寺のご本尊って何なのかしら?参拝するときに知っておくべきことや正しいマナーも知りたい!」
お寺参拝の際、ご本尊について知識があると参拝の意味や価値がグッと深まります。ですが、ご本尊の基本的な知識やお寺での正しい参拝の仕方について知らない方も多いのではないでしょうか。
- お寺のご本尊とは何なのか知りたい!
- お寺によってご本尊が違うのはなぜ?
- ご本尊に対する正しい参拝マナーを知りたい!
など、お寺のご本尊について知りたいこともあるでしょう。
そこで今回は、『お寺のご本尊とは何か』という話を中心に、『ご本尊の基礎知識』について詳しくお伝えしていきます!
また、ご本尊に対する正しい参拝マナーについても紹介するので、次回のお寺参拝がより特別なものになるはずです!
お寺のご本尊とは?その意味と役割
ご本尊とは何か、またなぜお寺にとって重要なのか、基本的な知識からご紹介していきます。
ご本尊の定義と意味
まず、「ご本尊」とは、お寺の本堂や仏堂の中心に安置されている仏様のことです。お寺の中心となる存在であり、信仰の対象として最も尊ばれている仏像や掛け軸などを指します。
実際、ご本尊は単なる飾りではなく、そのお寺の教えや思想を象徴する存在なのです。また、参拝者にとっては心の拠り所となる大切な存在でもあります。
ご本尊の姿は、如来(にょらい)、菩薩(ぼさつ)、明王(みょうおう)、天部(てんぶ)など様々な形で表されています。それぞれのお寺がどの仏様をご本尊として祀るかは、そのお寺の宗派や歴史的背景によって決まってくるでしょう。
お寺におけるご本尊の役割
ご本尊はお寺において中心的な役割を果たしています。具体的にどのような役割があるでしょうか。
ご本尊はそのお寺の教えや思想を象徴しています。例えば、阿弥陀如来をご本尊とするお寺では、阿弥陀如来の「念仏を唱える者を必ず救う」という本願を中心とした教えが説かれているのです。
また、ご本尊は修行や瞑想の対象としても重要な役割を持っています。お坊さんたちは、ご本尊に向かって読経や瞑想を行うことで、仏の教えに近づく修行をしているわけです。
参拝者にとっては、悩みや願いを聞いてもらう存在であり、心の支えとなっています。ご本尊に手を合わせることで、心が清らかになったり、前向きな気持ちになれたりすることもあるでしょう。
ご本尊と縁起の関係
お寺のご本尊と「縁起(えんぎ)」には深い関係があります。縁起とは、物事が様々な条件や原因が重なり合って生じるという仏教の基本的な考え方です。
例えば、病気平癒のご利益がある薬師如来をご本尊とするお寺には、健康に関する悩みを持つ方が参拝に訪れることが多いです。このように、自分の願いや悩みに関連するご本尊を持つお寺を参拝することで、より強い縁を結ぶことができるとされています。
ご本尊との縁を大切にすることで、自分自身の心の平安や願いの成就につながると考えられているのです。だからこそ、お寺参拝の際には、そのお寺のご本尊について知っておくことが大切なのかもしれません。
お寺のご本尊の種類と特徴
お寺のご本尊には様々な種類があります。ここでは代表的なご本尊について紹介していきます。
如来(にょらい)系のご本尊
如来とは、悟りを開いて仏となった存在のことです。頭に「肉髷(にくけい)」と呼ばれるこぶがあるのが特徴的です。
最も代表的な如来は「釈迦如来」です。釈迦如来は、仏教の開祖である釈迦牟尼仏(お釈迦様)のことで、多くの禅宗のお寺で本尊として祀られています。
「阿弥陀如来」も日本では非常に人気のある如来です。浄土宗や浄土真宗のご本尊として祀られることが多く、西方極楽浄土に住み、念仏を唱える者を救うとされています。阿弥陀如来は、両手で「来迎印(らいごういん)」を結んでいるのが特徴的です。
「大日如来」は真言宗のご本尊として知られています。宇宙の真理そのものを表す仏様で、両手で「智拳印(ちけんいん)」を結んでいるのが特徴です。
ほかにも「薬師如来」(病気平癒)や「弥勒如来」(未来仏)など、様々な如来が各お寺のご本尊として祀られています。
菩薩(ぼさつ)系のご本尊
菩薩とは、自らも修行中でありながら、他の人々を救うために働く存在のことです。華やかな装飾品を身につけているのが特徴的です。
最も有名な菩薩は「観音菩薩」でしょう。日本全国に観音信仰は広まっており、多くのお寺で本尊として祀られています。観音菩薩は、人々の苦しみを救うために33の姿に変化するとされ、なかでも「千手観音」は千本の手を持ち、あらゆる方法で人々を救うと言われています。
「地蔵菩薩」も日本で古くから親しまれている菩薩です。子どもや亡くなった人を守る仏様として知られており、お地蔵さんとして道端などでもよく見かけることがあるでしょう。
そのほか、「文殊菩薩」(知恵を司る)や「普賢菩薩」(修行と実践を司る)なども重要な菩薩として、様々なお寺でご本尊として祀られています。
明王(みょうおう)系のご本尊
明王は、怒りの形相で人々の煩悩を打ち砕く姿で表される仏様です。怒った表情や炎に包まれた姿で描かれることが多いです。
最も有名な明王は「不動明王」です。火炎の中に立ち、右手に剣、左手に縄を持ち、悪魔や煩悩を退治する姿で表されています。真言宗の一部のお寺では、本尊として祀られることもあります。
また、「愛染明王」は恋愛成就のご利益があるとして、特に女性からの信仰を集めている明王です。赤い肌をした六臂三面(ろっぴさんめん:6本の腕と3つの顔)の姿で表されることが多いです。
このように、明王は怖い顔をしていますが、実は人々を救うために煩悩と戦ってくれている存在なのです。
天部(てんぶ)系のご本尊
天部とは、インドの古い宗教に由来する神々が仏教に取り入れられたもので、仏や菩薩を守護する役割を持っています。武器を持っていたり、動物に乗っていたりするのが特徴的です。
「毘沙門天(びしゃもんてん)」は七福神の一人としても知られ、財宝や幸福をもたらすとされています。鎧兜を身につけ、右手に宝塔、左手に矛を持った武神の姿をしています。
「弁財天(べんざいてん)」も七福神の一人で、芸術や学問の神様として信仰されています。琵琶を持った美しい女神の姿で表されることが多く、女性からの信仰も厚いです。
このほか、「大黒天」や「吉祥天」なども天部の仏様として、様々なお寺でご本尊として祀られています。
宗派別に見るご本尊の違い
日本の仏教には様々な宗派があり、それぞれ異なるご本尊を祀っています。ここではその違いを紹介していきます。
浄土真宗のご本尊
浄土真宗のご本尊は「阿弥陀如来」です。阿弥陀如来は、「念仏を唱える者を必ず救う」という本願を立てた仏様として知られています。
実際、浄土真宗では、他の宗派のように様々な修行をするのではなく、「南無阿弥陀仏」と唱えることを重視しています。そのため、本尊も阿弥陀如来一尊に定められているのです。
浄土真宗のお寺では、本堂の中央に阿弥陀如来の立像(または座像)が安置されていることが多いでしょう。また、本尊の両脇には親鸞聖人や七高僧の像が配されていることもあります。
真言宗のご本尊
真言宗のご本尊は基本的に「大日如来」です。大日如来は宇宙の真理そのものを表す仏様で、密教の根本仏とされています。
ただし、真言宗の中でも様々な流派があり、不動明王や薬師如来、虚空蔵菩薩などをご本尊としているお寺もあります。例えば、高野山真言宗では大日如来、智山派では不動明王を本尊とすることが多いです。
真言宗のお寺では、「曼荼羅(まんだら)」と呼ばれる仏様の世界を表した図も重要視されています。金剛界と胎蔵界の二種類の曼荼羅が特に有名で、これらも真言宗の重要な信仰対象となっています。
浄土宗のご本尊
浄土宗のご本尊も「阿弥陀如来」です。浄土真宗と同様に、阿弥陀如来の本願を信じ、念仏を唱えることを重視しています。
しかし、浄土真宗との違いもあります。浄土宗では基本的に阿弥陀如来の坐像(座っている姿)を本尊としているのに対し、浄土真宗では立像(立っている姿)を本尊とすることが多いのです。
また、浄土宗では開祖である法然上人の教えに基づき、念仏を唱えるだけでなく、様々な善行を積むことも大切にしている点が、「念仏のみ」を重視する浄土真宗との違いとなっています。
日蓮宗のご本尊
日蓮宗のご本尊は「本尊の掛け軸」です。これは他の宗派と大きく異なる点で、仏像ではなく掛け軸を本尊としています。
具体的には、中央に「南無妙法蓮華経」の題目を大きく書き、その周りに釈迦如来や多宝如来、四大菩薩などの名前を配した「曼荼羅(まんだら)本尊」が使われています。これは、開祖である日蓮聖人が自ら描いた「御本尊」にならったものです。
日蓮宗では、この本尊に向かって「南無妙法蓮華経」と唱えることで、仏の境地に至ることができるとされています。多くの日蓮宗のお寺では、本堂の中央にこの掛け軸が掲げられているのが特徴的です。
禅宗(曹洞宗・臨済宗)のご本尊
禅宗(曹洞宗・臨済宗)のご本尊は基本的に「釈迦如来」です。釈迦如来は、仏教の開祖であるお釈迦様のことで、悟りを開いた姿として表されています。
禅宗では、座禅を通じて自らの心の中に仏性(仏となる素質)を見出すことを重視しています。そのため、悟りを開いたお釈迦様を本尊として仰ぐのは自然なことなのです。
また、禅宗のお寺では、本尊の両脇に達磨大師(だるまだいし)や開祖の像が安置されていることも多いでしょう。曹洞宗では道元禅師、臨済宗では栄西禅師が開祖として尊ばれています。
お寺でのご本尊に対する正しい参拝マナー
ご本尊に対する正しい参拝マナーを知っておくと、お寺参拝がより意味深いものになります。ここでは基本的な参拝方法をご紹介していきます。
参拝の基本的な流れ
まず、お寺に到着したら、山門や総門をくぐる前に一礼するのが良いでしょう。これは、お寺全体への敬意を表す行為です。
次に、手水舎(ちょうずや)があれば、手と口を清めます。右手で柄杓を持ち、左手を洗い、次に柄杓を左手に持ち替えて右手を洗います。その後、左手に水を受けて口をすすぎ、最後に柄杓を立てて柄の部分を洗い流して終わりです。
そして、本堂に向かい、ご本尊に参拝します。本堂の前では、まず一礼してから中に入りましょう。入る際は、足元の敷居をまたがずに、片足ずつ上げて入るのがマナーです。
本堂内では、ご本尊の前に進み、まずはお賽銭を入れます。その後、一礼、合掌してお祈り、一礼をします。
山門をくぐった後、本堂に向かって一礼します。
合掌・礼拝の正しい作法
合掌(がっしょう)は、両手の平を合わせ、胸の前で軽く押し合わせる形です。指先は顔の高さくらいまで上げ、親指を胸に近づけるようにするのが基本的な形ですね。
礼拝(らいはい)は、合掌したまま上体を前に倒す動作のことです。一般的には、30度程度お辞儀をする「敬礼(けいれい)」と、45度程度深くおじぎをする「奉礼(ほうれい)」があります。
お寺での基本的な参拝の作法は、「一礼、合掌、一礼」です。まず軽くおじぎをして、次に合掌して心の中で念じ、最後にもう一度おじぎをして終わります。
参拝時の服装や持ち物
お寺参拝の際の服装は、基本的にはカジュアルすぎないものが望ましいです。特に重要な法要や由緒あるお寺を参拝する場合は、清潔感のある服装を心がけましょう。
女性の場合、露出が多い服装(ミニスカート、ノースリーブなど)は避け、肌の露出を控えめにするのがマナーです。また、帽子をかぶったままお参りするのも避けたほうが良いでしょう。
靴を脱いで上がる場所では、靴下を履いていくのがマナーです。
持ち物としては、お賽銭、御朱印帳(ご希望の場合)があると良いです。また、有名なお寺や観光地化しているお寺では、拝観料が必要な場合もあるので、あらかじめ調べておくと安心です。
ご本尊からいただけるご利益とは
各ご本尊には、それぞれ特有のご利益があるとされています。ここではその代表例をご紹介していきます。
ご本尊ごとの主なご利益
各ご本尊には、それぞれ特有のご利益があるとされています。ここではその代表例をご紹介していきます。
釈迦如来:悟りを開くための智慧を授けてくれるとされています。自己啓発や精神的な成長を願う方に特に縁の深い仏様です。
阿弥陀如来:死後に極楽浄土へ導いてくれるとされています。また、現世での平安や幸福も授けてくれると言われていますよ。
観音菩薩:あらゆる苦しみから救ってくれるとされています。特に、子授け、安産、病気平癒などのご利益があると言われています。
地蔵菩薩:子どもや亡くなった人々を守る仏様として知られています。子どもの健やかな成長を願う方や、先祖供養に関心のある方に縁の深い仏様です。
不動明王:強い意志を持ち、悪魔や煩悩を退治する仏様なので、目標達成や厄除け、魔除けのご利益があるとされています。
各ご本尊にはそれぞれ特有のご利益があるので、自分の願いや悩みに合ったご本尊のいらっしゃるお寺を参拝すると良いかもしれません。
知っておきたい!全国の有名なご本尊を持つお寺5選
全国には様々なご本尊を持つお寺がありますが、ここでは特に有名な5つのお寺をご紹介していきます。
奈良県「東大寺」:東大寺のご本尊は「盧舎那仏(るしゃなぶつ)」(大仏様)で、高さ約15メートルの巨大な仏像として知られています。奈良時代に聖武天皇の発願によって造られたこの仏様は、宇宙に遍在する仏の真理を表しており、見る者に圧倒的な存在感を与えてくれるでしょう。
京都府「清水寺」:清水寺のご本尊は「十一面千手観音菩薩」で、千本の手で多くの人々を救うとされています。国宝に指定されているこの仏様は、通常は33年に一度の「秘仏」として公開されるため、拝観できる機会は貴重です。観音様の慈悲にあやかりたい方におすすめのお寺です。
和歌山県「高野山金剛峯寺」:高野山金剛峯寺のご本尊は「大日如来」で、真言密教の根本仏として崇められています。空海(弘法大師)が開いたこのお寺は、今でも多くの修行者が訪れる聖地となっています。神秘的な雰囲気の中で、大日如来の智慧と慈悲を感じてみてはいかがでしょうか。
滋賀県「三井寺(園城寺)」:三井寺のご本尊は「薬師如来」で、病気平癒のご利益があるとされています。歴史上、様々な天皇や貴族が病気治療のために祈願したというこのお寺は、現在でも健康祈願の参拝者が多く訪れています。特に、ご本尊の前で行われる「お加持」は有名で、心身の健康を願う方におすすめです。
神奈川県「鎌倉大仏(高徳院)」:鎌倉大仏のご本尊は「阿弥陀如来」で、座高約11メートルの銅像として知られています。屋外に鎮座するこの仏様は、穏やかな表情で参拝者を迎えてくれます。また、内部も拝観できるので、阿弥陀如来の懐に抱かれるような不思議な体験ができるでしょう。
これらのお寺はいずれも日本を代表する寺院で、観光としても人気があります。しかし、単なる観光地としてではなく、ご本尊の意味や役割を理解した上で参拝すると、より深い体験ができるでしょう!
まとめ:お寺のご本尊を知って、より深い参拝体験を
今回は、お寺のご本尊について、その意味や役割から種類、宗派による違い、参拝マナーまで幅広くご紹介してきました。
ご本尊とは、お寺の本堂に安置されている中心的な仏様のことで、そのお寺の教えや思想を象徴する存在であることがお分かりいただけたでしょうか。如来、菩薩、明王、天部など様々な種類があり、それぞれ特有のご利益や意味を持っているのです。
また、宗派によってご本尊の選び方も異なります。浄土真宗や浄土宗では阿弥陀如来、真言宗では大日如来、禅宗では釈迦如来、そして日蓮宗では特殊な掛け軸をご本尊としている点も興味深いですね。
お寺参拝の際には、正しいマナーを心がけることも大切です。参拝の基本的な流れ、合掌・礼拝の作法、焼香の仕方、適切な服装なども理解しておくと、より意義のある参拝ができるでしょう。
そして何より、ご本尊との縁を深めるためには、そのご本尊について知識を深め、教えを日常生活で実践していくことが重要なのです。
次回お寺を訪れる際は、ぜひそのお寺のご本尊について事前に調べてみてください。ご本尊の意味や役割を理解した上で参拝すると、単なる観光とは違う、より深い体験ができるはずです。ご本尊に対する敬意を持ち、心を込めて参拝することで、心が清らかになったり、新たな気づきが得られたりするかもしれません。
お寺のご本尊は、何千年もの間、多くの人々の心の拠り所となってきました。現代に生きる私たちにとっても、日々の忙しさから離れ、心を静める大切な存在となっているのです。
ぜひ、この記事で得た知識を活かして、お寺参拝をより意味深いものにしてみてください。ご本尊の前で静かに手を合わせる時間は、自分自身と向き合う貴重な瞬間にもなります。お寺巡りの楽しみがさらに広がることを願っています!